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中部発きらり企業紹介 Vol.14

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株式会社ファースト(愛知県名古屋市)

第1回「ものづくり日本大賞」優秀賞受賞
〜サイン・ディスプレイ用品の製造方法[4X工法](登録商標)〜
 

 

今回、政府主催の第1回「ものづくり日本大賞」(平成17年8月)において優秀賞を受賞した株式会社ファースト(愛知県名古屋市)水本勝弘社長にお話を伺いました。






水本社長:

 遅くなりましたが、昨年度の「ものづくり日本大賞優秀賞」の受賞おめでとうございます。今回の受賞では水本社長ご自身どのような点が評価されたとお思いでしょうか。

 これまですべて手作業でしかも単品受注生産で製作していた看板業の分野において、多品種小ロットの量産を可能にした画期的な「3X(スリーエックス)工法」、それをさらに進化させた「4X工法」を開発、導入したことが評価されたと思っています。
それまでの看板・ディスプレイ業界は、寿司屋さんと同じで注文されてから職人が品物を作っていて、しかも時価商売が当たり前の世界でした。その世界で業界初の画期的なシステム工法を独自開発し、導入したことで初めて看板業界での定価販売を実現した点が高く評価されたんだと思います。

 
 


株式会社ファースト


 

 多品種小ロット大量生産を可能にした3X工法、4X工法について、そのメリットを含めて教えていただけますか。
水本社長:  例えば、スタンド看板などは上部の看板部分である「サイン部」と下部の「ベース」、この二つをつなぐ「支柱」の三つで構成されているわけですが、看板は、これらの構造部品である「ベース」「支柱」「サイン部」の3つのパーツ(3X(スリーエックス))とさらにデザイン性(1X(ワンエックス))を加えた4X(フォーエックス)で構成されていると考え、製品の基本的なこの3つの部品を共通部品化することで、お客様のサイズや色、形などに関する多種多様なニーズにそれらの部品の組み合わせのバリエーションで即応するというのが4X工法というわけです。
 この4X工法の利点は、一つは、共通部品を増やすことで商品の組合せバリエーションが大幅に増える点です。二つ目は、共通部品の単純組立て製品になりますので注文をいただいたその日か、翌日までには納入できるほど納期が短い点です。併せてこの4X工法では、注文を受けてから共通部品で製品を組み立てますので、完成品在庫は一切発生しない点も大きなメリットになります。まさに看板業界で初めていわゆる世界のトヨタの“カンバン方式”に類したシステムを導入したというのがこの3X工法、4X工法というわけです。
 それと、4X工法製品は組立式であるため修理も簡単で、部品の再利用、リサイクルにも対応できるので環境に優しい商品でもあります。


 



第1回「ものづくり日本大賞優秀賞」を
受賞された水本勝弘社長
 


 






 




水本社長:

 この画期的な「3X工法」「4X工法」を開発されたきっかけはなんでしょうか。


 実は、私は普段から歴史小説などを読むのが好きで、今から15年ほど前に、中国の古典で孔子の書を読んだときに、「三・大・体」という言葉に出会いました。この「三・大・体」というのは、すべての役立つものは三つの要素を兼ね備えているという意味ですが、この言葉に大変興味を抱きその後もいろいろと調べたある時、「看板」というものも大きく3つの要素、部分から成り立っていることに気付かされたわけです。

 
 看板は先ほどお話ししましたように「ベース」「支柱」「サイン部」の3つの部分の組合せで成り立っているわけで、それらの構成部分を部品化して、部品を増やせば、ものすごい数の組合せの看板ができるということに気付いたことが後に「3X工法」を生み出すきっかけになったというわけです。このときは、本当にうれしくて夜はなかなか寝られなかったことを今でも覚えています。


 


水本社長:

 ところで、看板・ディスプレイ業界についてですが、業界は今どんな状況にあるのでしょうか。

 看板・ディスプレイ業界は大体ですが、看板関連の団体に加盟している事業者約7000社と、その他に会社などを脱サラした心得のある人などがやっている2、3人規模の事業者20,000社ほどで成り立っています。当地名古屋は全国の中では東京地区に次ぐ大阪地域よりも事業者が多い地域ですが、事業者規模では比較的小さな規模の事業者が多いところです。当社などは名古屋地区では大手になります。看板事業者は古くから顧客企業のお抱え看板屋という位置付けで事業をしている事業者が多く、当地域はそうした関係を大切にする地域だから比較的小規模な事業者が今も多いということだと思います。



4X工法によりデザインが豊富で、多様化する
ニーズにも幅広く対応

 当業界はバブル経済が崩壊して以降、今から10年くらい前からでしょうか全国的に、IT革命の影響を受けて、良いモノを早く安く提供できなければ生き残れない時代に突入しました。今もIT化に対応できない企業はどんどん淘汰されているという状況です。

 


 


そうした厳しい状況にある業界の中にあって現在順調に業績を伸ばしてこられている御社にはいわるゆ営業マンが一人もいらっしゃらないとお聞きしましたが・・・。
 
水本社長:  そのとおりです。世間一般に言うところの外回りをして注文を取ってくるような営業マンは当社には一人もいません。必要がないからいないわけです。つまり、3X工法や4X工法を導入している現在、当社の製品は電話によるカタログ販売でお客様から注文をいただくシステムになっていますので、一切外回りの“営業”活動はしていません。
 それと、考えてみますと当社の製品は同業他社さんにもたくさん取り扱っていただいていますので、全国各地の取引のある看板屋さんの社員の方々が当社のいわば営業マンのようにエンドユーザーの方々に当社商品を売っていただいているわけですから、当社には営業マンはいらないということです。

 












 


 






モノ作りの中部地域が可能とする
高品質の共通部品

   



水本社長:











 


 
そうしますと、現在御社には30名ほどの社員の皆さんがいらっしゃいますが、社員の皆さんはどういったお仕事をされているのでしょうか。

 
ほとんどが開発と生産現場の仕事に携わっています。
 我が社の成長、発展の鍵は、お客様が求めている商品をどこよりも早く開発し、高品質な商品を安く、早くお客様にお届けすることだと思っています。ですから、社員全員が自社製品を熟知し、誰もがどんなときでもお客様に早く、適確に製品説明ができなければいけないという経営方針でやっています。これを実現するために全社員が実際に共通部品から最終製品を誰もが適確に組み立てられるようにしています。




 

 

 差し支えなければ御社の社員教育といいますか、人材育成についてもう少し具体的にお話をお聞かせいただけますか。
水本社長:  当社では、全社員が、販売担当でも経理担当でも そうですが、開発メーカーとしての責任とお客様の信頼と信用を得るためということで当社製品を正しく作ることができなければいけないということで、4X工法システムとその製品について検定試験を行っています。
 具体的には上から1級、2級、3級の試験があり、1級検定では部品の素材知識から、設計能力、実技能力などについて実技と論文の試験を行います。実技試験では上級試験になればなるほど短時間で正確に製品を組み立てられないと合格しません。もちろん正社員だけでなくパートさんにも課しています。3級を取得するとパートさんも時給が上がるようにしています。


在庫ゼロでも発注翌日の納品を可能とする
アセンブリ体制
 

 社員すべてが、実際に自社製品を作ることができるということは、電話での注文やクレームに対して電話に出た社員が直ぐに的確に対応できますので、電話のたらい回しもありません。こうしたことでお客様の信頼は得られると思っています。これは当社の強みにもなっていると確信しています。
 それから当社では人材育成ということでは、研修や試験の実施以上に大切なこととしているのが『人を中心に物事を考える』ということです。
“モノ作りは人づくり”と言われるように、当社は社員が働きやすい、働く気になれる環境づくりに力を入れています。例えば、一つの製品を作るにしても、気持ちイヤイヤ作るのか、生き生きした気持ちで作るのかでは出来上がる製品の品質が変わってきます。ですから社員に生き生きとした気分で働いてもらうために実践していることとして、まずは“社員の給料は高め”にするということです。初任給からベテラン社員給料まで他社さんに比べて高額設定にしています。それと当社にはボーナスはありませんが会社の利益が出たときは社員配当ということで“利益の2割は必ず社員に還元”しています。
 それから、例えば海外出張するにしても“どの社員もどんな場合でも「ファーストクラス」で出張”させています。良いモノ作りをするには、良い仕事ができる、良いアイデアが生まれる環境が欠かせないと の考えからです。
とにかく当社では人材、人づくりを一番重要項目にしています。お蔭様で新卒採用にも募集人数の30倍近い応募があり、優秀な若者を採用できていますので、平均年齢27〜28歳という彼らの眠れる優秀な才能を思う存分発揮してもらって、それが業績の更なるアップに繋がるという好循環経営ができています。
 




2001年度グッドデザイン賞を受賞した
「RXカーブサイン」

 


 






 

 






水本社長:


 
いかに人材、人づくりが大切か、実際に社員の皆さんが大切にされているかよく判りました。人材関係のほかには御社の成長、発展の鍵となっているものというのはあるのでしょうか。


 あります。この名古屋地区に当社が立地している点です。
 この地域には、トヨタ関連の部品メーカーさんのようにすばらしい技術・技能を持っておられるモノ作り企業がたくさん存在しています。
 現在4X工法製品の共通部品づくりもそうした高度な専門技術を持った140社ほどのメーカーさんに生産をお願いしています。昔、中国から部品を輸入したことがあるんですが、届いたコンテナ1 台分の全部が不良品だったといった苦い経験もしました。少し値段が高くてもいいですから高品質の部材・部品で当社の製品を作りたいと考えています。

 
 例えば、当社製品の中でその斬新さから注目されている「RXカーブサイン」という商品がありますが、この商品が開発できたのも 、中部地区には、アルミの製作技術の優れた業者が多いという絶好の立地条件、立地環境が整った地域で仕事をさせてもらっているからだと思っています。
 

 


 最後に、今後の御社の事業・経営ビジョンについて教えていただけますか。

水本社長:

先日、(名古屋市内の)伏見から栄まで歩いた際、通り沿いに看板やディスプレイが約2000個ありましたが、そのうち当社の製品は約200個でした。その時まだまだ当社も頑張らないといけないなぁと思うとともに、もっと高品質の製品を創らなければいけないし、創 られれば必ずお客様は付いてきていただけると強く思いました。
 当社は、良い製品があれば営業マンは必要ないという考えで営業費用は掛けずにその分の費用を全て研究開発に使っています。ただ、万が一問題が起これば社員の誰でもが対応できる体勢を整えていますので、全社員に営業意識だけは持ってもらっています。
 また、当社のキャッチコピー『デザインのいい街で暮らしたい』という言葉に表しているんですが、看板やディスプレイは人々の生活づくりを応援できる仕事だと考えています。ですから当社も美しい街づくりなどにも貢献できると思いますので、これから益々そうしたことにも傾注し、少しでも貢献できればと思っています。日本の街中では様々な不揃いの看板があちらこちらに散在する状態です。決して美しい街景観ではないと思っていますので、シンプルで均衡・均整のとれた美しい街づくりに当社は看板・ディスプレイを通して貢献してきたいと考えています。



日本の美と素材を大切にする「飾り名人」


美の世界を意識し続ける水本社長の書

   そのために、人材、人づくりといった視点からも、これまで行ってきた国内外の街を実際に歩いて看板・ディスプレイを調査する取組みを続け、全社員に、新製品を開発するためのアイデアや美しい街づくりに対する考えを身につけてもらえればと思っています。
 さらに、街中だけではなく今後は、人々の身の回りのさり気ない飾りなどのディスプレイにも挑戦してみたいと思っています。そうした取り組みを通して「美」の世界を一層意識していき、最終的には、看板やディスプレイづくりを「ディスプレイ工学」などと言われるような学術的なものにしていきたいとも思っています。

 

 ファーストさんにこれからも頑張っていただき、街並みや人々の身の回りの生活空間 がもっと美しくなればありがたいですね。皆様の御活躍をお祈り申し上げます。本日はお忙しいところありがとうございました。
   
      会 社 概 要
会社名: 株式会社ファースト
本 社: 愛知県名古屋市天白区原1丁目815番地
創 業: 昭和43年
  設 立:   昭和53年
代表者: 代表取締役 水本勝弘
事業内容: サイン・ディスプレイ用品の製造・販売


  資本金:   4600万円
  従業員:   31名
  URL:   http://www.first-sp.com
  TEL:   052−803−6131
  FAX:   052−802−7131

 


水本 勝弘 社長

                              第1回「ものづくり日本大賞」に関するプレスリリース資料(平成17年8月)
        取材:平成18年5月10日 総務課 情報公開・広報室 
 



 中部経済産業局 総務課 情報公開・広報室

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