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中部発きらり企業紹介 Vol.13

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大岡技研株式会社(愛知県豊田市)

第1回「ものづくり日本大賞」優秀賞受賞
〜密閉成形精密鍛造工法による自動車変速機用高精度歯車の開発〜


 

 

 今回、政府主催の第1回「ものづくり日本大賞」(平成17年8月)において優秀賞を受賞した大岡技研株式会社(愛知県豊田市)の大岡三茂社長にお話を伺いました。

 


 

 昨年度の「ものづくり日本大賞」では優秀賞を受賞されましたが、すでに受賞から7ヵ月ほど経っておりますが、今時点での率直なご感想などお聞かせください。
 

 

  上:本社第2工場
下:篠原工場
 

大岡社長:

 

 ものづくり日本大賞の受賞は、当社のモノ作りに対する取り組みが評価されたものと思っており、大変嬉しく思っています。一緒に表彰された社員らもそうですが、モノ作りに対し優秀な人材を表彰する制度、それも第一回目に賞をいただいたことを非常に誇りに思っています。今、モノ作り後継者の育成が大きな課題と痛感する経営者の立場からも将来に向けての大きな励みにもなっています。今回の受賞は、実際に会社の外の方々から大変良い反響をいただいており、その点でも本当にありがたく思っています。

 

 


 

 今回の受賞に至るまでいろいろとご苦労などお有りかと思いますが、始めに御社の創業から今日までの歴史について簡単に教えていただけますか。
 

 

 

 

 

大岡社長:

 

 社名変更と歯車鍛造成形へ移行した 当時を語る大岡社長

 当社の前身は、昭和12年に父の大岡三一が創業した鉄道部品の製造販売会社です。昭和35年に型打ち鍛造を始めてから自動車産業に進出しました。当時は(株)大岡鍛工所という社名で、実際の職場も「汚い、きつい、危険」といわれた3K職場で、名古屋市内にあったこともあり回りの住民からは、“大岡炭鉱所”と言われていました。当然今と違って大卒はおろか高卒も来てくれませんでした。その後昭和40年代に入ると46年のドルショッ ク、48年のオイルショックでエネルギー大量消費産業のため大きな影響を受けまして、社業の将来を懸念していました。下請けの悲哀を味わうとともに、このままでは将来はないと思い、それまで誰もやったこともない自動車変速機用歯車の鍛造成形で勝負しようと決心したわけです。これが今回受賞した製品の開発のスタートになります。その後社員のガンバリもあり、たくさんの困難も何とか乗り切り、現在に至っているという次第です。“大岡炭鉱”と言われた社名も、バブルがはじけた年に大岡技研(株)に改めました。

 

 

 



 


 


 

 歯車づくりでは主流である切削工法から誰もまだ成功させていない鍛造工法への移行を決断されたのはどういった理由からでしょうか。
 

大岡社長:

 前述しましたように、当時は非常に厳しい経営環境の中に置かれていましたので、経営者として会社の将来計画が重要と思い、いろいろと社会を取り巻く条件、つまり環境問題とか、エネルギー問題、少子化問題などから将来社会を予測し、そうした将来に合致するモノ作りをしていかなければ生き残れないと考えたためです。その考えから出てきたのが、まだ誰も成功させていない自動車変速機用歯車の鍛造工法による成形というわけです。これに成功すれば、切削工法と違い、切粉や切削油、油煙も出ないので省エネで、環境に優しいですし、複数のギア(歯車)の一体成形も可能なことから大幅に工程数を減らせ、しかも鍛造製品は切削品より耐久性、デザイン、小型軽量化の面で優れ、競争力は十分にあると考えたわけです。もちろん、当時の当社には歯車に関する知識、技術も皆無で、もちろんそうしたものを持ち合わせた人材も誰一人いませんでしたが、オンリーワン企業を目指して“とにかくやってみよう”ということで始めました。

 


沈み一体スピードギヤ粗材
(一体化・コンパクト化)

 


 


 

 全く、下地のない条件下で自動車変速機用歯車の鍛造工法成形に取り組まれたということは、大変苦労されたことと思いますが・・・。
 

大岡社長:

 大変苦労しました。“とにかくやってみよう”ということでまずやったことは、担当技術者を決め、外部で歯車の先生を探して当社に来て頂き、毎週土曜日彼らに猛勉強してもらうことでした。猛勉強の甲斐もあって開発期間2年ほどで最初の製品の実用化に漕ぎつけました。大変な状況の中でも何とか前に進んでこられたのも開発担当者らのガンバリがあったからだと思います。開発チームの担当者の中には、仕事でケガをして入院している間もずっと頭の中から歯車のことが離れなかったらしく、復帰早々にまた新しいアイデアを出してくれた者もいました。その時は本当に、社員のモノ作りに対する熱い思いを感じました。
 

 


ドッグギヤ付ヘリカルスピードギヤ
(ドッグギヤとヘリカルギヤを鍛造成形)


 

 開発の段階では数々の失敗もあったと思います。それでも社員の皆さんが成功まで長い間頑張れたのには何か秘策でもあるのでしょうか。
 

 

大岡社長:

 

 特にこれといった秘策などありませんが、今もその点は変わらずに社員に対して取っている姿勢というか、考えがあります。それは“失敗を恐れるな”ということです。昔、研究開発に使うため数百万円もする金型を外注して作らせ、いざ実験のためスイッチを入れた瞬間、見事にその金型が壊れたことがありました。実験データも何も当然残りません。ただ数百万円の金型が壊れただけです。普通、担当者は怒られ責任を取らされるでしょうが、私はその時も担当者にはよくぞ失敗した、失敗は成果だ、さらに失敗を恐れず頑張れというようなことを言いました。その時担当者は責任を取って辞めようかと思っていたようで、社長からそう言われて逆に驚いたということを後日聞きました。

 

 


精密鍛造歯車類


 

 大岡社長の先見性と社員のチャレンジ精神を奮い立たせた言動、それに失敗を恐れず未知のモノ作りに挑戦した社員の皆さんの力の結集によって、精密鍛造歯車はできたのですね。現在、御社のマニュアルトランスミッション(MT)用鍛造歯車は海外自動車メーカーではシェア70%超とのことですが、実績も信用もない段階からしかも海外でここまでのシェアを取るまでにはさらにご苦労があったのではないですか。
 

大岡社長:

 熱間鍛造工程

 それは大変でした。全く信用、信頼、実績のない中小企業ですから国内ではなかなか見向きもしてもらえませんでした。しかし最初に採用してくれたのは国内メーカーのS社です。現在も一番の国内取引先になっています。
 我が社が海外メーカーと取引が多いのは、当社製品はMT車用ギアですからAT車が好まれる日本ではなかなか拡販できにくいこともあって当初から思い切って、海外に目を向けまず米国に売り込みに行ったという経緯からです。米国自動車メーカー担当者が鍛造品であることを信用してくれないので実際生産現場を見てもらったりして、ようやく鍛造品の耐久性などが認められ、最初にボルグワーナー社と、さらにはその後GM社とも契約でき、今では米国自動車メーカーのMTはほぼ当社の鍛造ギアに切り替っています。

 


 

米国での成功に味を占めたこともあって、次ぎにMT車が全車の85%も占める欧州でも成功するのではと欧州に進出しました。当時は“精密鍛造歯車で世界制覇するぞ!”と大見得を切っていましたが、欧州というところはなかなか伝統を重んじる土地柄で、新しいものに手を出したがらない風土で最初苦労しました。そこで、米国系の欧州自動車メーカーへの売り込みを第一に考えて販売活動をした結果、まず欧州GM系メーカーに採用が決まりました。その後、数年を経て欧州自動車メーカー本体への直接売り込みにもやっと成功したわけです。
 さらに欧州自動車メーカーの世界拠点には本社の意向が強く働くので、欧州自動車メーカー本社への売り込みの成果により、本社から紹介 していただく形でBRICsの市場にも進出することができました。現在では、世界におけるほとんどの欧州自動車メーカーで採用していただいています。

 

 
 


 以前は3K職場の代表のような職場ということでしたが、自動車変速機用高精度歯車の密閉成形精密鍛造工法技術の開発によって職場環境も一気にクリーン化され、今では大卒者もたくさん入社されておられるようですが、御社の今後を支える社員の皆さん、言い換えればモノ作りに携わる人材の育成についてはどのように取り組んでおられますか。
 

大岡社長:

 当社では「若さは最大の強み」ということ、つまり事業の継続性や創造性の観点から若い人材を重要視しています。ちなみにですが、当社従業員の平均年齢は29歳台です。難しいのですができる限り20歳台を維持するように努力しています。次代を担う若い社員達に当社で働くことで夢を持ってもらうためにも経営者として5年先までの長期ビジョンをまとめています。この取り組みは昭和51年以来毎年欠かさずに、各部門長が全員集まった場で検討して、必要な手直しも加えながら行ってきています。さらには、社員一丸となって次のステップへ進むためにも、経営理念・基本方針、長期経営戦略・技術戦略などの経営計画書を毎年作成し、その発表会も年初に開催しています。
それから、技術者にはその本来の喜びである「モノを作る喜び」が感じられるよう、一つの製品づくりの最初から最後まで任せて、自分が作ったものへの愛着が持てるようにするなどの役割分担の仕組みを導入しています。また、社員の技術に対する探求心に応えられるように大学への奨学制度も設けています。自動車変速機用高精度歯車の密閉成形精密鍛造工法技術の開発のチームリーダーはこの制度で大学夜間部を卒業した第1号社員です。

 

クリーンな製造現場


 最後に、今後の御社の事業・経営ビジョンについて教えてください。
 

大岡社長:

 今日の我が社を形づくってきた重要な要素の一つに“特許”があります。我が社の特許取得第一号は平成元年で英国、フランス、ドイツ、カナダ、米国で取得しました。もちろん特許取得の経験もそれまで皆無でしたから、一から勉強しましたので大変でした。当社はその時から外見上では模造品かどうか区別しにくい“製法特許”ではなく、見た目で模造品と判る“形状特許”の取得を行っています。今から思えばこの“形状特許の取得”も現在の成功の重要な要素の一つだったと思います。
 それから、ビジョンのことですが、私は常に20年後を見据えて企業経営を行うべきだと思っています。20年後を見据えた経営計画、ビジョンが企業経営には大切です。そうしたビジョンにより、今作っている製品から次代を担う新製品へ移行していかなければいけないことも視野に入ってきます。企業が進むべき方向を間違えると、たとえ社員の給料を半分に減らしても、企業は生き残ることはできなくなるでしょう。私は、経営ビジョンを作ることは決して難しいことではないと思っています。たとえば少子高齢化の進展、エネルギー問題、中国経済の急速発展などという、今の世界の経済動向などに関する確定情報を積み上げて分析すると、20年先の将来の姿が見えてきます。当社のこの先5年間の経営計画を盛り込んだ経営計画書なるものはこうして作っています。

 

 

 


 本日はお忙しいところありがとうございました。
 

 

 

 

 

 
   会 社 概 要

 

 

 

 



大岡 三茂 社長

 

会社名:

 

大岡技研株式会社

 

本 社:

 

愛知県豊田市高岡町秋葉山1−1

 

創 業:

 

昭和12年

 

設 立:

 

昭和36年

 

代表者:

 

代表取締役社長 大岡三茂

 

事業内容:

 

自動車部品(トランスミッションギア)
の製造・販売

 

資本金:

 

9,800万円

 

従業員:

 

360名

 

URL

 

http://www.o-oka.co.jp/ja.html

 

TEL

 

0565−52−3441

 

FAX

 

0565−52−2907

 




 

                              第1回「ものづくり日本大賞」に関するプレスリリース資料(平成17年8月)
        取材:平成18年4月11日 総務課 情報公開・広報室 

 


 中部経済産業局 総務課 情報公開・広報室

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