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中部発きらり企業紹介 Vol.11

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株式会社箔一(石川県金沢市)

第1回「ものづくり日本大賞」優秀賞受賞
〜布素材への耐久性を付与させた金沢箔の貼付け加工技術と複雑なデザインによる加飾技術〜
 

 今回、政府主催の第1回「ものづくり日本大賞」(平成17年8月)において優秀賞を受賞した(株)箔一(石川県金沢市) 技術開発部中山健治シニアエキスパート(以下、中山SE)にお話を伺いしました。箔の製造から箔工芸品の製造、販売まで一貫して手掛ける、日本で唯一の金沢箔の総合メーカーをご紹介します。
 




中山SE:







 


 

 

 まずは、「ものづくり日本大賞」優秀賞の受賞、おめでとうございます。

 ありがとうございます。当社は、昭和50年に現在の社長(浅野邦子)が創業しました。もともと箔屋に嫁いだ現社長が金沢箔の名前を守りその伝統を後世に伝えるとともに、新しい箔の世界を作り上げるため、金箔づくりから金箔を活かした製品づくりまでも手掛ける会社を興したのをきっかけにして、現在に至っています。


  御社は、「伝統的工芸品」も作っておられる企業でありながら、社員の平均年齢も30歳代と若いということですが、中山SEご自身、どのような思いで入社されたのでしょうか。
 
 





株式会社箔一本社(上)。1階は国内最大の
箔工芸品フロア「箔巧館」(下)となっている。


中山SE:

 私は、10年ほど前に入社しましたが、学生時代も工芸分野を学んでおりましたし、「輪島塗」などの伝統的工芸品にもともと興味を持っていまして、 自然な思いでこの世界に入りました。 入社直後は、伝統的工芸品への箔貼り作業の現場から品質管理まで一通り経験させてもらいましたので、今の技術開発の仕事に非常に役立っています。 

 
 

わずか「10円玉の3分の1」の金を畳一畳分に延ばしたもの。「手技の極意」と言われる製箔の工程であり、薄さ約10000分の1ミリ。
 

 






 


 

 



  一般に「繊維」というと、ものすごくミクロで複雑な構造なものという印象ですが、そんな繊維への箔貼りはどのように施しているのでしょうか。また、繊維と金箔のミックスという アイデアは、中山SE自らが考えられたのですか。

中山SE:

 繊維への箔付け処理というのは、繊維の表面を固定し、糸全体ではなく一部(布の表
と裏)をその繊維にマッチングしたノリを置き箔で押さえつけているというイメージです。箔を製造する過程は機械を用いていますが、実際の「箔付け」は全て手作業で行っています。

 もう少し詳しく言いますと、金箔貼りは布などの素材に金箔を埋め込んで、コーティングしていくというものです。素材の表面に、@接着剤、A金箔、Bトップコートの3層を乗せるとイメージしていただければよいかと思います。

 重要なのは、これらの素材、用途に合わせた箔貼りのマッチングです。現在も、日夜地道な研究を重ねています。素材に 対して他にはない「優しさ」を持たせることができるのが金箔貼りであると言えます。繊維と金箔のミックスは技術開発部(3名体制)で考案しました。これまでいろいろな製品に箔貼りを行ってきましたが、何とか布に箔貼りができないか常々考え研究開発を 繰り返し重ねてきた結果、実現することができました。

 




中山SE:

 その「箔貼り」技術は、箔職人であった現在の会長から継承されたのものでしょうか。

 基本的な考え方については会長から教わりました。入社当初は、耐洗浄性等を必要としない人形などへの箔貼り技術を学びましたが、 マニュアルのある教えではなく、職人のいわゆる「見て学べ」というものでした。こうしたことは、伝統的工芸品の 「技」の伝承に共通しているものだと思います。


 



「箔移し」の一工程。北陸の雨や雪の多
い湿った空気と水質の良さ、職人の技術
が、金沢の金箔工芸を支えている。



 


  中山SEは入社以来、主に製品の研究開発に携わってこられたとのことですが、耐久性のある箔布製品を開発するに至るまで、実際どのくらいの期間を要 したのでしょうか。
 
中山SE:  トータルで5年程度でしょうか。でも、まだ研究は続いています。 当社は現在、布、食材、皮革、建材などへ幅広く箔貼り加飾を行っていますが、特に、最近は取引先のニーズ変化のスピードが早く、日々、新しい 技術と商品開発に追われています。絹や紡繊の箔貼りについてはかなりの反響があり、海外からのニーズも高まっています。もともと金の箔貼り 自体技術的に難しいものですが、これが繊維への箔貼りとなると難易度がさらに高く、繊維の種類によって特性が変わってきますから、取引先のニーズ・仕様に合うものを作るために何千回もテストを繰り返したり、徹夜が続 くこともあります。特に衣料品への箔貼りは、伸縮に対応する耐久性や肌触りなどが求められますので苦労します。

 












 


 






 





箔一独自の金箔付け技術を駆使した
雛人形と2004年パリコレに出展されたドレス
 



中山SE:















 





 

 現在も新しいニーズに対応できる技術、商品の開発の続けておられる中、中山SEご自身の、この先の次なる目標は何になるのでしょうか。

 まずは、箔貼りの更なる技術開発ですね。加えて、ISO取得に対応した品質管理を継続していきます。さらに、これは社として掲げられているのですが、 食用分野の拡大を進めていきます。例えば、砂糖の粒 、ケーキのアラザンへの箔付けなどです。開拓していきたい方面は多岐に渡っています。

 金箔を食べることについては、医学的なメリットはまだ立証されていませんが、体内電流が活性化されて傷等が治癒しやすくなるといった言い伝えは この地方に昔からあるようです。今のところは、高級感の高い金箔とともに食材を口にすることで、精神的な満足感が得られる 気持ちになるところに意味があるのではないかと思っています。


  展示・販売施設「箔巧館」の商品を拝見しましても、金メッキなどでは出せない独特な箔付けの風合い、趣が感じられましたが、 こうした様々な箔の製品を生み出すまで、失敗から成功を生んだ体験もあるのでしょうか。 
中山SE:   新製品を作る都度、あらゆる困難な課題に直面しています。例えば、実際に色彩加工した箔については、箔の原料の金属組成や色付けの方法に依存するため、一度色付けした完成品は基本的に元の色彩に戻すことができません。しかし、失敗作でも今までに見たことがない色合いの品が出来上がったとき、そのデータが後に貴重な 製品を生み出すきっかけになったりもします。いくつものこうした経験が、思わぬところで活かされたりしたことが実際にもあります。


 




箔貼りした繊維を手に取り、熱心に語る中山SE

 


 最後に、全国のモノ作り企業、これからモノ作りを始めようとする起業家の方へ、中山SEから一言メッセージをお願いします。
 
中山SE:   当社は伝統的な技術を当地で継承している一企業ですが、決して伝統に甘んじることなく、消費者に満足していただける良質な製品を作る責任を常に持っていきたいと思います。日本はモノ作りで支えられており、今後、後継者問題も心配されます。我々も含めた若いジェネレーションが「モノ作り」に真摯に対応していくことが重要 だと思っています。

 我々の役割は、伝統的手法も活かしつつ、新しい時流に合った素材に対する箔貼り技術の開発だと思っていますが、この場合、先代から伝承された伝統的な技術・手法だけでなく、 それと我々のような若い世代が持つ新しいこれまでにはない感性をうまく融合させながら、 次世代にマッチしたさらに箔貼り技術・モノ作り技術を開発していくことが何より大切ではないかと思っています。

 

 

本日はありがとうございました。
  〜社長からの一言〜

 金沢箔というのは、従来、金沢箔を柔らかい布(絹等)に貼るとシワが発生し、見た目や密着性が非常に悪い等、製品実用化にはさまざまな課題がありました。しかし、それら課題を克服し、更に非常に薄い金沢箔を自由自在のデザインにカットする技術とのコンビネーションによって、従来にないものづくりを可能としました。弊社、技術開発部の中山健治SEは、何度の失敗を重ねながら、ついに完成させました。

 今ではさらに内装建材や、食用金箔、あぶらとり紙と金沢箔を使った様々な分野にも取り組んでおり東京や世界中の方々とお会いする機会も増えております。
 
 日本特有の伝統を守りながら新しさを取り入れることこそ、文化を継承し育んでいくことであると考えます。今後も金沢箔をあらゆる分野に生かし、皆さまに愛される商品創りに益々取り組んで参ります。

                           株式会社箔一代表取締役社長 浅野邦子

 

      会 社 概 要
会社名: 株式会社箔一
本 社: 〒921-8061 石川県金沢市森戸2-1-1
創 業: 昭和50年1月
代表者: 代表取締役社長 浅野 邦子
  事業内容:   金沢箔美術工芸品・特殊箔押金彩加工・各種金銀特殊箔・料理用超高純度金箔・あぶらとり紙・装飾・建材インテリアの製造、加工、販売
  資本金:   4,800万円
  従業員:   111名 (平成18年2月現在)
  URL:   http://www.hakuichi.co.jp/
  TEL:   076-240-0891
  FAX:   076-240-6800
 



浅野邦子 社長


シニアエキスパート 中山健治氏
 

                              第1回「ものづくり日本大賞」に関するプレスリリース資料(平成17年8月)
        取材:平成18年2月9日 総務課 情報公開・広報室 



 中部経済産業局 総務課 情報公開・広報室

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