中部発きらり企業紹介 Vol.113 有限会社 モメンタムファクトリー・Orii|中部経済産業局
トップページ > 中部発きらり企業紹介 > Vol.113 有限会社 モメンタムファクトリー・Orii

中部発きらり企業紹介 Vol.113

更新日:平成30年8月1日

高岡銅器の伝統着色技術から新しいクリエイティブなモノを生み出し続ける

  • 富山県高岡市
  • 高岡銅器
  • 着色技術
  • 下請100%からの脱却
  • 自社ブランド構築
  • インテリア・エクステリア建材
スター★ちゅぼっと君
折井 宏司 代表取締役社長の写真
折井 宏司 代表取締役
写真背景:同社オリジナルのメタル・クロック
(壁掛け時計)
見る人にわびさびを感じさせる色合いを持ちながらも
現代の生活にもなじむデザイン性の高い商品。
 今回は、有限会社モメンタムファクトリー・Oriiの折井 宏司(おりいこうじ)代表取締役にお話をうかがいました。
 約400年の歴史を持つ富山県高岡市の伝統工芸品「高岡銅器」。工程の最後に仕上げとして銅の表面に化学反応を起こし独特の色彩を浮かび上がらせる着色の工程があります。 同社は伝統的な着色技術を守りながらも、その技術を応用してこれまで不可能であった薄い銅板への着色を成功させました。新しく開発した技術を活かしながらインテリア用品、アクセサリーなどの小物類から大型建材まで様々な商品を製造・販売しています。
 2015年「The Wonder500」に認定、「ものづくり日本大賞」優秀賞受賞、2017年「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選定、「グッドデザイン賞」を受賞されるなどその技術力と商品力は各方面から高い評価を得ています。
沿革;やりがいを感じていた東京での生活を諦め家業を継ぐことを決断
同社が薄い銅の表面に創り出す色彩豊かなカラーパネル
同社が薄い銅の表面に創り出す
色彩豊かなカラーパネル
 私は高岡銅器の着色業である折井着色所の3代目で、オリジナルの新規事業を行うために立ち上げた有限会社モメンタムファクトリー・Oriiを稼働させてからは10年になります。 折井着色所は祖父である初代が大正末期から昭和初期にかけて銅器着色職人になるため丁稚奉公として働いた後に独立、しかし戦争に伴い一時は商売ができない時期もあり1950年(昭和25年)に創業しました。
 父である2代目の時代は、高岡銅器の置物が玄関先、床の間に置いてあることがある種のステータスともなっていた時代で、高度経済成長期であったこともあり、高岡銅器の生産量がピークを迎えていました。 また、美術品やインテリアなどの置物としての用途以外にも、結婚式の引き出物、朱肉入れ、時計といった企業の記念品などの引き合いがたくさんあり、仕事を断ることが大変なくらい盛況でした。 大阪万博時には太陽の塔のミニチュアレプリカの作成依頼が大量にきたこともありました。しかしバブルが崩壊した頃から高岡銅器の需要は急速に減り始め、当社の経営にもかげりが出始めていました。
 私は、その頃東京でIT関係の仕事に就いており、バブル崩壊後様々な業界が苦戦を強いられる中、IT業界は急成長を遂げた時期であり、やりがいを感じていました。
 長男としていつかは高岡に戻らなければいけないのではないかという考えもありましたが、東京での生活に満足をしており戻るつもりはありませんでした。しかし、お前が継がなければ折井の伝統技術、折井着色所は無くなるが本当にそれでいいと思っているのかという叔父から言われた一言にハッとし、葛藤もありましたが職人になるのであれば少しでも早い方がいいだろうとの考えから26歳の時に家業を継ぐ決断をし、高岡に戻りました。
同社工場の外観はとてもおしゃれ
同社工場の外観はとてもおしゃれ
表札は人気No,1カラーのブルー(青銅色)ドアは同社オリジナルの斑紋孔雀色
表札は人気No.1カラーのブルー(青銅色)
ドアは同社オリジナルの斑紋孔雀色
         
自分で需要を生み出そう。下請け100%からの脱却、今では売り上げの9割近くが自社オリジナル技法の着色と製品!
<着色工程の例 その1>
銅板に糠みそを塗る
[1]銅板に糠みそを塗る
高温で焼き付ける
[2]高温で焼き付ける
左)焼き付け後 右)焼き付け前
[3]左)焼き付け後 右)焼き付け前
水で洗い流すとまだら模様が浮かび上がる
[4]水で洗い流すとまだら模様が浮かび上がる
鉄漿を塗りバーナーで焼き付ける
[5]鉄漿を塗りバーナーで焼き付ける
何度か同じ作業を繰り返すことできれいな色が浮かび上がりツヤがでる。
[6]何度か同じ作業を繰り返すことで
きれいな色が浮かび上がりツヤがでる。
インテリア置時計 左)斑紋孔雀色 右)青銅色
インテリア置時計
左)斑紋孔雀色 右)青銅色
シャンパンクーラー(tone)。コースター。色鮮やかなプレートSARA。Barなどで使われている。テーブルも同社製品
シャンパンクーラー(tone)/コースター
/色鮮やかなプレートSARA
Barなどで使われている。テーブルも同社製品
名刺入れ
名刺入れ
アクセサリー
アクセサリー
左)バングル 中央)ネックレス 右)ピアス
表札サンプル
表札サンプル
ショールーム(高岡市内)<br />山町ヴァレー 八ノ蔵
ショールーム(高岡市内) 山町ヴァレー 八ノ蔵
文具問屋の古い蔵を改修してつくられたショールーム。八つの蔵があり、カフェや工房などのテナントが入っている。マルシェなども開催され、地元住民の交流の場、新しい観光スポットともなっている。
 高岡に戻ってから高岡市デザイン・工芸センターに通い、後継者育成スクールを受講し、銅の鋳造をするための型づくり、鋳造、研磨などの表面加工、彫金といった高岡銅器を製造するための一連の技術を学びました。 このスクールを通して最終仕上げの色付けまでの間に様々な工程があることや鋳造のやり方によって色の付け方の向き、不向きがあることが分かりました。 また、センターには学生や自分と同様に家業を継ごうとUターンした人など色々な人が学びに来ており、共通の悩みを語り合ったり、勉強会を開催したりと様々な交流ができました。
 着色は高岡銅器製造工程の最後の工程であり、いわゆる下請の立場なので高岡銅器の需要が減り仕事がなくても自分たちで注文を増やし売り上げを拡大することができません。
 私が高岡に戻った当時、高岡銅器の市場はより縮小の一歩をたどっており、仕事が減る一方でした。着色業をやっている事業者の売上と従事者数から従事者の年収を導き出すと食べていくことが難しい数字が出るような市場でした。
 このままでは会社がつぶれてしまうという危機感を常に感じており、もともとインテリアが好きであったこと、着色技術屋なので色で勝負をしたいという考えからその2つを組み合わせた自社オリジナル商品を開発し、自分で需要を生み出すことが可能なビジネスをしようと考えました。

厚さ1mm以下の銅板への着色
 高岡市デザイン・工芸センターでの経験から鋳造からやろうとするとかなりの手間がかかること、費用がかかることはよく分かっていたので、薄い銅板に目をつけました。薄い銅板であればホームセンターで購入でき、価格も安くて軽く、加工も簡易なのでそこに色を出すことを考えました。 高岡銅器の着色は色を塗るのではなく、鋳造された銅や真鍮の表面に化学反応を起こし錆や腐食を発生させ色を出します。 表面に糠床を付けて焼きあげる「ぬか焼き」、米酢と鉄クズを漬けこんだ液を使い銅器を焼きながら染め付ける鉄漿「オハグロ」、硫酸銅と緑青の溶かした液体で作品に大根おろしを塗り煮込む「煮色」など様々な伝統的な技法があります。 しかしながら、薄い銅板へ色を出すには従来の伝統的な着色技術をそのまま使うだけでは難しく、試行錯誤が必要となりました。 幸いなことに職人としての勘や経験がなかったために、こうしなければいけないといった固定概念やしがらみもなく、その道の職人だったら到底やらないようなことも含めて試行錯誤を2年ほど繰り返し、薄い銅板に色を出すことに成功しました。
 今では基本色10色に着色技法の組み合わせで数十種以上のカラーバリエーションがあります。特に斑紋孔雀色は当社が生み出したオリジナルの色です。銅器の着色は同じ色は出せても二度と同じ模様が出ないため1点1点が異なる顔を持ちます。
 この薄い銅板に着色する技術を使って時計、表札、コースター、食器、アクセサリーなどの小物からインテリア内装外装ともに使える壁材やテーブルなどの大型の商品まで手掛けることができるようになりました。

自社オリジナル商品の販路開拓
 自社オリジナル商品が少しずつ売れ始めたのは展示会出展がきっかけです。最初は東京ビッグサイトで行われたギフトショーに業界の青年会のメンバーと共同出展しました。共同出展は4年ほど続けて、ぽつりぽつりと注文が入ったりしたものの大きな成果は得られませんでした。 共同出展することによって費用面は抑えられますが、1つの空間に異なる事業者の複数の出展物が置かれるので、テーマを決めたとしても全体的な統一感が無く、個々の商品のアピール力が弱いという側面がありました。
 そこで単独出展できる展示会に挑戦しました。単独で出展することで自分の表現したい世界観を1つのブースの中に創ることができ、商品のアピール力も高まり、1回目の展示会で大口注文を得られました。その時に自分ですべてリスクを負ってやりきることが大切だと感じました。 一方で、単独で出展すればすぐに大きな受注が継続するわけではなく、根気強く毎年出展し続けることが大事だと思います。 たいてい3年で辞めてしまう事業者が多いですが、4年、5年と続けていくことでたとえ受注が思うように入らなかったとしても、バイヤーやお客さんの頭の中にじわじわと当社の名前や商品イメージが残っていったり、ネットワークが広がったりしていき結果として受注につながっていきます。 現在では展示会に出展する以外の営業活動はしていませんが、売り上げの9割近くが自社オリジナル製品の販売によるものになっています。2014~2017年にかけて売り上げは以前の3倍近くになりました。

         
地域産業資源活用事業、ものづくり補助金を活用!
地域産業資源活用事業でデザイナーとコラボをしてつくられたブランドtoneの商品
地域産業資源活用事業でデザイナーと
コラボをしてつくられたブランドtoneの商品
 地元の商工会議所や公益財団法人富山県新世紀産業機構などの支援機関に国の補助金を紹介してもらい活用しました。
 2011年に独自の着色技術を活かしたインテリア用品及び建築部材の製造・販売事業で国の地域産業資源活用事業の認定を受けました。この認定事業を活用してデザイナーとコラボをしてブランド「tone」を立ち上げたり、展示会出展のサポートを受けたりすることができました。
 また、ものづくり補助金を活用し、建築部材用の大型の着色用パネルを切断、加工するための機械を導入しました。これにより、すべて外注で頼んでいた大型の部材の加工などを自社で行うことができるようになり、まだまだ課題はありますが一貫生産体制の仕組みができました。
 補助金を活用したことによってできた他の企業とのつながりは今でも続いており、お互いの工場の見学を行ったり、工場内の連携を続けていたりします。また、ほかの地方の伝統工芸の産地から補助金の活用方法を相談されネットワークができ、何か一緒に作れたらいいねといった話も出ています。
<着色工程の例 その2>
銅板に特殊な薬品を塗る
[1]銅板に特殊な薬品を塗る
アンモニアに反応させると鮮やかな青が浮かび上がってくる
[2]アンモニアに反応させると鮮やかな青が浮かび上がってくる
         
従業員の平均年齢は34歳!県内外から若者が集まってくる
若手社員
若手社員
工場内では若い社員が活躍している。働きながら創作活動をしている社員もいる。
 (有)モメンタムファクトリー・Oriiを立ち上げて10年になりますが、そこから1年ほどして自分の代になってはじめての社員の採用を始めました。伝統工芸産業に限らずいまや色々な業界で従業員の高齢化や人材不足は深刻な問題となっておりますが、幸いにも当社の従業員の平均年齢は現在34歳です。 昨年は新卒と中途2名、今年は新卒を3名取りました。パートも入れると全体で14名の従業員がおり、そのうち8名が女性です。美術大学や工芸大学、造形大学出身の県外からの若者もいますし、地元の工芸高校出身の若者もいます。 また、以前全く異なる職業に勤めていたもののものづくりがしたいという思いを抱いて転職してきた人材もおり、地元出身に限らず全国から若い人材が集まっています。
 美術大学などを出た若者はものづくりやデザインなどクリエイティブなことができる職場環境を探している人が多いですが、その受け入れ先が少ないのが現状です。当社は工場見学をよく受け入れていますし、毎年インターンシップで学生の受け入れも行っています。 そこから工芸、造形関係者の間であそこの工場って伝統工芸をやっているけど若い人がたくさんいるよね。なんかニューヨークの展示会に出たりとか新しい面白いことをやっているよね。という評判が広がっていきました。 ありがたいことに県内の情報誌のIターン、Uターン特集の取材を受けたり、職人特集として雑誌やテレビの取材を受けたりしています。そういった情報が紙面だけでなくウェブサイトやFace bookにも掲載され、それを見た学生が問い合わせをくれることが多くなってきました。 10年前であれば伝統工芸産業に就職する人はほとんどいなかったですし、当社も雇い入れる余裕がありませんでした。しかし今ではじわじわと色々な取組みがつながっていき、口コミで高岡に面白いことをやっているところがあるという話が広がっていき、若者を県内外からひきつけることに成功しています。
         
今後のビジネス展開・取り組みたいこと
 今までは伝統工芸高岡銅器の着色技法を応用して、薄い銅・真鍮の圧延板に新たな発色技法を確立し、少しずつではありますがインテリア・建築分野に進出して新たな需要を開拓してくることが出来ました。 まだまだニッチな世界での展開ではありますが弊社が進めてきたことがスタンダードに、「あたらしい」が「ふつう」になっていくようにまだまだ精力的に発信していきたいと思います。
 また今後はこの銅板発色をファッションアイテムに展開していきたいという思いがあります。昔からファッションには興味があったので銅板を使った鞄やジャケット、アクセサリーなどまだまだ銅・真鍮の発色板の魅力を表現できる舞台はあるのではと思うのでどんどん商品開発に取り組んでいきたいです。
         
会社概要
折井  宏司 社長写真
折井 宏司 社長
  1. 会社 有限会社 モメンタムファクトリー・Orii
  2. 法人番号 2230002013561
  3. 本社 〒933-0959 富山県高岡市長江530
  4. 事業内容 美術銅器着色/メンテナンス・金属部材・インテリア建材・エクステリア建材着色・企画販売
  5. 創業 2008年(平成20年)創業
  6. 代表者 代表取締役社長 折井 宏司
  7. 資本金 300万円
  8. 従業員 14人
  9. HP 有限会社 モメンタムファクトリー・Orii ホームページ外部リンク
  10. TEL 0766-23-9685
  11. FAX 0766-23-9696

このページに関するお問い合わせ先

中部経済産業局 総務企画部 情報公開・広報室
住所:〒460‐8510 愛知県名古屋市中区三の丸二丁目五番二号
電話番号:052-951-0535
FAX番号:052-951-0557

ページ上部へ戻る

Adobe Reader バナーPDFファイルをご覧いただくためにはAdobe Readerが必要です。外部リンク