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中部発きらり企業紹介 Vol.111

更新日:平成30年2月27日

中部地域の伝統技術と地の利を活かし、CFRPリサイクル市場の一翼を担う

  • 岐阜県御嵩町
  • CFRP
  • 炭素繊維
  • リサイクル
スター★ちゅぼっと君
 今回は、カーボンファイバーリサイクル工業株式会社の板津秀人(いたずひでひと)代表取締役社長にお話を伺いました。同社は非常に困難とされるCFRPリサイクルの技術確立に成功したベンチャー企業です。 応用したのは中部地域の伝統的な瓦焼きとタイル焼きの手法で、他の追随を許さない低コストと高品質な炭素繊維の回収を実現しました。実用化が進まないCFRPリサイクルのリーディングカンパニーとして、中部地域を一大リサイクル拠点とする計画も始動しています。
中部地域固有の瓦焼き・タイル焼き技術をリサイクルへ応用
板津 秀人 代表取締役社長の写真
板津 秀人 代表取締役社長
 CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic 炭素繊維強化プラスチック)とは、プラスチック、つまり樹脂に炭素繊維を混ぜ込み強化させたものです。金属より軽くて丈夫なため、自動車や飛行機などで採用が進む最先端の素材です。ここから炭素繊維のみを回収するのが、CFRPのリサイクル技術です。
 創業のきっかけは、自動車の内装ボードやプロペラシャフトに使われていたCFRPに含まれる炭素繊維が安定調達できなくなったため、端材の中から炭素繊維のみを元の形状のまま取り出して再利用したい、という紡織メーカーからの要望でした。
 愛知県は三州瓦に代表されるように、日本最大の瓦の産地のひとつです。私の父は瓦を焼くための炉を国内外で販売しており、瓦を焼く技術を持っていました。 なかでも「いぶし瓦」と呼ばれる、粘土を焼成する際、無酸素状態の炉内にガスを注入して還元反応を起こし、表面にカーボンの皮膜を焼き付ける方法が得意でした。この、酸素を遮断して熱分解させる方法はまさに当社のCFRPリサイクルで用いられる熱分解技術です。
いぶし瓦の銀光沢は、表面の数ミクロンの炭素皮膜によるもの
いぶし瓦の銀光沢は、表面の数ミクロンの炭素皮膜によるもの
 また、岐阜県は全国のタイル生産の7割を占める地域です。私が以前勤めていた会社では、タイルの不良品を粉砕して雷おこしのように再度焼き固めた透水ブロック(雨を地中に浸透させる部材)を扱っていました。
 当社のリサイクル技術は、これら瓦焼きとタイル焼きを融合させたものです。私にはこれら技術のベースがあったため、CFRPの端材を焼いて繊維を取り出すことは簡単でした。3ヶ月ほどで良いサンプルが完成し、事業を垂直立ち上げできたのが2006年です。 最近ではカーボンを構造材に適用した世界初の量産車であるBMW i3(アイスリー)の天井材にもリサイクル炭素繊維が1割程度使われていますが、当社はそれよりずっと前に量産車に採用された実績があるのです。

CFRPから炭素繊維を回収
CFRPから炭素繊維を回収
 このリサイクル技術が評価され、今年、中部地域のベンチャー企業を支援する中部ニュービジネス協議会から「中部ベンチャー大賞」をいただきました。地場産業が培った中部地域の技術をうまく応用したリサイクル技術と言えます。大賞を獲れたのは、地域性が評価された部分もあると思います。
         
伸張する炭素繊維市場、リサイクルできずに増え続ける端材;ぽっかり空いたサプライチェーンの最後のピースを埋めたい
 炭素繊維市場は、2030年には年間48万トンに成長すると予測されています。2016年時点では年間7万トンで、うち3割は端材となっています。今はそのほとんどを埋め立て焼却しています。それに加えて、事故車などライフサイクルを終えてそのままになっているものもあります。 北米には、使えなくなった飛行機をそのまま砂漠に並べてある“飛行機の墓場”もあるほどです。例えば、ボーイング787は、CFRPを1機あたり35トン使っており、1機あたり5トンの端材が発生しております。現在ボーイング787は月産12機なので、端材だけでも月60トン、年間720トン発生しております。 また、ライフサイクルを終えた飛行機を考慮すると、将来的にはCFRPの年間発生量は約5,000トン相当になると想定されます。リサイクル産業が成り立つためには、材料の供給とリサイクル品の出口の両方のバランスが重要です。現状では、材料のサプライチェーンの最後のピースがぽっかり空いているのです。 リサイクルが可能になればチェーンが循環する、その一翼を担いたいのです。
         
マテリアルリサイクル技術について;他社とは一線を画す、当社独自の技術
 炭素繊維は、軽く燃えにくいために飛散し電気集塵機を短絡させる可能性があります。 こういった難しさからCFRPのリサイクル化はなかなか進まず、リサイクルしているとしても「サーマルリサイクル(焼却の際に発生する熱エネルギーを回収・利用すること)」がほとんどですが、当社が取り組んでいるのは「マテリアルリサイクル(素材としてのリサイクル)」です。
 現在、世界中で事業化レベルにあるマテリアルリサイクルの事業者は数える程しかなく、いずれも、樹脂を選ばず大量生産に向く「熱分解法」を用いています。
 「熱分解法」の各社技術の主流は、CFRPを”粉砕後”、”1段階”で”少量ずつ”熱分解させる方法です。CFRPは炭素繊維と樹脂が複合化されているため、その半分は樹脂です。CFRPを粉砕せず熱をかけると樹脂が分解・燃焼して膨大なエネルギーが発生し、そのコントロールは非常に困難です。 そこで熱処理前にCFRPを粉砕し、少量ずつ供給する事で、温度が上がれば供給を止めるというコントロールがしやすいのです。
 ただ、前述した紡織メーカーの自動車向け炭素繊維としての要求は、“粉にせず、繊維を長いまま取り出してほしい”ということでした。粉砕には、処理を安全で容易にするメリットがある一方で、コストがかかり、“長さ”という性能を犠牲にするデメリットがあるので、当社は粉砕しないリサイクル手法開発に心を砕きました。 
当社のリサイクルスキーム
CFRP


2段階熱分解の実力
 重さと価格を比較すると、コンビニのおにぎりは100グラム約100円。自動車は1トン約100万円。重量換算では、おにぎりと自動車の価値は同じです。では瓦はというと、1トン約17,000円。つまり瓦はとても安く、大量に均一に低コストで焼ける技術があるわけです。 この窯業の技術が、コスト要求が厳しい自動車業界にも対応できる唯一の可能性だと考えています。
 1段階目は、炉を密閉して蒸し焼きにします。まず、灯油バーナーで炉を加熱し、炉内の温度が上昇すると、樹脂が溶けガス化します。この可燃性のガスを配管で回収したところに空気を送り込むと、新たにそこがバーナーになって燃え出します。後は空気を送り込むだけで燃え続けます。 外部エネルギーは不要で、樹脂を熱分解した可燃性ガスを燃料として利用するため、外部エネルギーを加える方法と比べ、大幅な省エネ効果が得られるわけです。
 2段階目は、1段階目の熱分解処理で炭素繊維の周りに付着した、樹脂の炭化物である“残留カーボン”を焼いて、炭素繊維だけを取り出します。周りのカーボンだけを焼いて、炭素繊維が燃える直前で冷却する技術に、独自のノウハウが詰まっております。
 エネルギーの比較もしましょう。一般産業用途のバージンの炭素繊維1 kgを生成するのに必要なエネルギーは290 MJ(メガジュール)ですが、当社法ではこの1/30以下のエネルギーで炭素繊維を再生できます。 また、炭素繊維協会が発表している一般的な炭素繊維リサイクルに必要なエネルギー48 MJに対しても、当社法は1/5以下のエネルギーで炭素繊維を再生でき、世界最高水準の省エネを実現しています。
自動車もまるごと処理!
自動車もまるごと処理!
先に粉砕すると、端材に含まれる金属パーツなどが混入してしまう。
バッチ式の2段熱分解法では、解体が困難な自動車でも、まるごと炉で処理して、
炭素繊維をかさ高な状態で取り出せるので、必要な箇所を必要な形で取り出せる。
繊維は長いままに、金属部分は酸化せず、再利用できる。
         
NEDO[※1]、サポイン[※2]の利活用
 ここまで当社の技術を育てられたのは、国の支援制度を活用できたからです。2010年にはNEDOの受託研究とサポインに採択していただきました。
 2006年に初めて製品化してほどなく、大口顧客の契約を切られ借金ができてしまいました。各務原の岐阜県研究開発財団に相談に行ったところ、岐阜大学の守富先生を紹介されました。当社の技術を説明すると、将来性があると言われ、NEDOの事業として共同研究がスタートしました。 CFRPのリサイクルは難しく、学術者の中には事業化は不可能という方もいましたが、守富先生には先見の明があり、職人の勘としてしか捉えられていなかった当社の技術を理論づけしてくださって、事業として完成させることができました。

[※1]国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
[※2]戦略的基盤技術高度化支援事業
         
エネルギーゼロを目指して
瓦焼きの窯と同じ原理の炉
瓦焼きの窯と同じ原理の炉
 現在当社が所有している炉は9台で約2,000トンのキャパシティがあります。来年には12台、つまり約2,500トンに増強します。国内のCFRPの発生量は年間2,500トンですから、全国の端材全てを処理できる能力になります。
 今後、この炉を繋ぎ、廃熱・可燃性ガスを利用する事で、端材のもつエネルギーだけで稼働させる仕組みを構築したいと思っています。限りなくエネルギーゼロに近づけられるシステムを開発する予定です。
         
入口と出口が繋がった2017年 事業が本格稼働
 ただ、技術だけあっても事業として成立するものではありません。原料の調達先、売り先があってこそ事業として成立します。これまで、この入口と出口のバランスを取るのがとても難しかったです。
 まず入口として、当社が原料とするCFRPは、バージンではなく端材で、企業秘密のかたまりのため容易に入手できるものではありませんでした。しかし近年、大手航空機メーカーから機体の端材を5年先まで安定的に供給してもらう契約ができました。
 また出口として、今までサンプル出荷程度だった当社製品が、NEDOの成果もあって大手自動車メーカーに採用が決まりました。
 当社を軸にして、入口から出口まで一本のラインで繋げることができました。
         
今後の展望
 当社は5年後の上場を目標としています。現在のリサイクル炭素繊維の売り上げは5~6,000万円ですが、5年後には25億円を目指しています。

材料売りから最終製品まで事業拡大
 現在は繊維の材料売りだけですが、今後はシート材や中間材、最終製品まで手掛けたいと思っています。
 最もホットな話題のひとつとしては、CFRPの成型品の開発です。当社の思いに賛同いただいたのが、自動車部品などで高い成型技術を持つ日本ガスケット株式会社で、共同開発しています。肝となるのは、日本独自の成型技術である「紙すき」の技術です。 岐阜県美濃市の本美濃紙は、日本の和紙として2014年にユネスコ無形文化遺産にも登録されています。この美濃の紙すきの技術を応用して、自動車部品を開発しています。 炭素繊維を樹脂に混ぜ込んだどろどろの液をすきあげるのですが、普通の紙の様にフラットな状態ですきあげると、プレス成型するときに繊維が動き、繊維の密度が低い箇所は強度が落ちてしまいます。 そこで最終製品に近い形のまますきあげてからプレスすることで、繊維が動かず均質な強度を持ち、かつ薄いところと厚いところが一度に出来るのが特徴です。製品化の目途もたってきました。
 また、家電や断熱材の分野にも参入していきたいです。家電リサイクル法によって、リサイクル出来ない素材は使いにくくなっているので、家電部品のリサイクルは色々研究されています。現在多くの会社と試作を進めています。

カーボンを地域産業に。町工場からカーボン部品を。
 岐阜大学との共同開発の中で、プレス成型に使える粒状のペレットも試作しています。この地域の製造業者は、たいていプレス機を持っています。町工場でも、“金属は時代遅れだな、カーボンの部品でも作ってみようかな”ということが広がれば。地域の波及効果は大きいと思うのです。

当社をハブに地域内循環
岐阜県御嵩町の御嵩工場
岐阜県御嵩町の御嵩工場
 モノの移動には費用がかかります。複数の企業がここに設備を持ってきて一緒にやる方が効率良いと思います。2015年に銀行に頼み込んで融資を受け、この大きな工場を購入したのはそれが理由です。 リサイクル技術のある当社と、各種メーカーが組み、移動の手間も無くせば、必ず強い事業を展開できるでしょう。航空機や自動車産業の盛んな中部地域では、端材の調達先からエンドユーザーまで多く存在します。ここで地域内循環ができるのです。 ものづくりするうえでこれほど有利な土地は日本の中部だけと言えます。海外によく行きますが、飛行機で飛び回らないとお客様廻りができません。ここならすぐ近くに全てが揃っています。地域内で完結できる強みを活かさない手はないと思います。
         
ベンチャー企業経営の難しさ、国へ望むこと
 金融政策のひとつにマイナス金利がありますが、金利が下がっても銀行の融資基準や投資基準は緩和されていないので、私たちのようなベンチャー企業はなかなか大型の融資や投資が受けられません。 相変わらず、返済原資の確証を求められますので、いわゆる”死の谷”克服にはまだまだ分厚い壁があるというのが実感です。一定レベルをクリアしたベンチャーには、融資基準、投資基準を緩和してほしいですね。でなければ、せっかく良い技術を持っていても育たず、結局は大手に牛耳られてしまいます。
 また、多くの分野や企業に満遍なく補助金を配分するのではなく、オリンピックの強化選手育成と同じ考え方で、有望な企業を選抜して徹底的に支援することが必要だと思います。 ベンチャーの成功事例があまりに少ないので、学生は起業したがらずに安定した大手の会社に流れますし、現在岐阜県で上場を目指しているベンチャー企業は当社を含めたったの2社しかありません。もっと成功事例が増え、起業が喚起され、この地域が活性化することを願っています。
         
会社概要
板津 秀人 社長写真
板津 秀人 社長
  1. 会社 カーボンファイバーリサイクル工業 株式会社
  2. 法人番号 8200001018674
  3. 本社 〒505-0116 岐阜県可児郡御嵩町御嵩2193-102
  4. 事業内容 ・炭素繊維リサイクル
    ・再生炭素繊維の販売
    ・炭素繊維リサイクルプラントの販売
    ・活性炭の委託加工
  5. 創業 2006年(平成18年)創業、2008年(平成20年)4月設立
  6. 代表者 代表取締役社長 板津 秀人
  7. 資本金 4,500万円
  8. 従業員 17人
  9. HP カーボンファイバーリサイクル工業 株式会社 ホームページ外部リンク
  10. TEL 0574-49-9836
  11. FAX 0574-49-9837

このページに関するお問い合わせ先

中部経済産業局 総務企画部 情報公開・広報室
住所:〒460‐8510 愛知県名古屋市中区三の丸二丁目五番二号
電話番号:052-951-0535
FAX番号:052-951-0557

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