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サポイン好事例

高密度・高伸縮性を併せ持つニッティング技術とナノテク融合による複合高機能性繊維用品の開発

ケーシーアイ・ワープニット株式会社

確かな技術を確立し輸送機器向け用途へ展開

ナノファイバーシートを活用したアウトドア・スポーツ用品向け生地の開発に着手

同社は衣類の裏地や産業用資材の生産を主力事業とする企業である。昨今、アウトドアやスポーツ人口が増えてきたことを背景として、同社坂下剛開発次長(以下、坂下氏)は、「ジャケット等の外地に使う生地を自社で生産したい」という想いを抱いていた。

アウトドア・スポーツ用ウェアの生地は2層の織物の間にフィルムが挟まった3層構造を取っている。ただし、このような構造を取る生地は伸縮性と通気性に乏しいため、汗をかいた際に服の中が蒸れるという欠点があった。また、伸縮性に優れたアウトドア用品向けの外地の必要性については、アウトドア・スポーツ用品メーカーの方から直接聞く機会もあったことから、同社では伸縮性と通気性を両立させた生地の開発に可能性を感じていた。
そのような中で、以前から同社と付き合いがあった富山県工業技術センター(以下、センター)から、同社が取扱うポリウレタンを使用したナノファイバーシートを生産するエレクトロスピニング装置の導入に関する連絡が入った。ナノファイバーシートについて深く調べたところ、シート内の空隙の大きさの関係から、空気は通すが水分子は通さない性質があると分かった。
同社は優れたニッティング技術を保有し、伸縮性に関する多くの知見や実績を持っていた。「伸縮性に優れたニット生地の間にナノファイバーシートを挟むことで、伸縮性と通気性に優れた生地を開発できるかもしれない」。具体的なアイデアの実現に向け、坂下氏はサポイン事業を活用した研究開発の実施を検討、事業への採択後に本格的な研究開発を開始した。
確かな技術の確立に注力

伸縮性と通気性という特性は、本来は相反する性質である。サポイン事業では、これら二つの特性を両立させるための生地の製法を確立するとともに、作成した生地試作品の性能評価、量産化までを見据えた確かな技術を確立する必要があった。「単に性能面の強化だけではなく、実際に利用されるまでの生産体制面までを視野に入れなければ、アウトドア・スポーツ用品への提案が難しいと考えていた。」坂下氏は当時をこう振り返る。
「伸縮性と通気性の両立」は大きな課題であった。例えば、目の細かさや伸び感の差がニット生地とナノファイバーシートの間で非常に大きい場合、両者を積層させた生地の伸縮性は失われてしまう。伸縮性と通気性を両立させるためには、同社のニット生地の目の細かさや伸び感をナノファイバーシートに合わせて細かく調整し、生地の確実な製法を確立する必要があった。試作品の品質評価を何度も重ね、ナノファイバーシートや生地の接合、生地の目の細かさを検討するために繰り返しフィードバックした。
また、生地の試作品が完成した後は、まずは面識のあった土木関連企業に生地を使用した作業着の試作品を提供し、試作品の機能を検証する機会とした。土木作業のように、天候に関係無く作業を行う過酷なシーンで問題なく使えれば、アウトドアやスポーツ用途でも使えると考えたことによるものだった。
サポイン事業2年目の後半には、センターより韓国製のエレクトロスピニング装置の輸入代理店である株式会社ナフィアス(以下、ナフィアス社)の紹介を受け、ナノファイバーシートの量産化に関するアドバイスを得ることができ、生地の量産体制確立も現実味を帯びてくることとなった。
輸送機器カバーという新たな市場への転機
生地の量産体制確立も視野に入り、坂下氏は生地の顧客となるアウトドア・スポーツ用品メーカーのもとへと足を運んだ。開発した生地を提案したところその評価は高く、薄く、かつニット生地でナノファイバーシートを挟んでいるという独特な構造や、伸縮性・機能性に非常に優れるという点で特に高評価を得た。

ただし、性能面は高く評価されたものの、提案を通じて新たな課題もまた浮き彫りとなった。
例えば、既存のミシンなどを利用したアウトドア・スポーツ用品の生産ラインで生地の利用、加工が可能かといったように、メーカー側は生産ラインへの組み込み方についても気にしている。また、競合製品に比べて同社の開発した生地はどうしてもコスト高になり過ぎてしまうという点も課題として指摘された。顧客に提案したことで、当初想定していた市場への受入れに多くのハードルがあることもまた明らかになった。
ナフィアス社より輸送機器関連の顧客の紹介があったのはちょうどそのタイミングだった。先方顧客のニーズは「輸送機器を利用する環境に制約があり、雨が降るとごみやほこりが入ってしまう。雨水やごみから計器を守るカバーが欲しい」というものだった。
「アウトドア・スポーツ用品市場への進出を狙うだけではなく、製品の価値を活かした別の市場への展開も可能かもしれない」。坂下氏はより深く先方の話を聞く中で、輸送機器のカバーに求められる性能や価格設定を確認し、アウトドア・スポーツ用品と比べて相対的に入りやすい市場だと考えるに至った。
結果、アウトドア・スポーツ用品向けに開発した生地の表側のニット生地を切り替えることで、輸送機器の計器カバーを開発、新たな用途へと展開することにつながった。開発した製品は、伸縮性・通気性という機能の両立を必ずしも必要としたものではないが、同社が得意とする技術を活用した製品である。
顧客の声掛けに対して製品の展開可能性を考え、市場に出すことを強く意識した結果として実現した市場とのマッチングである。
様々な機会を活用した事業化を推進
輸送機器向けの製品開発に成功したことで、同社では当初考えていた市場に対する研究開発やPRを続けるとともに、性能を活かした新たな用途を探索する重要性を次第に認識するようになった。例えば、自社では収集できない顧客に関する情報を得るため、同社はナフィアス社との交流を今まで以上に増やし、より積極的な情報収集に努めている。
また、最近はさまざまな展示会への出展に力を入れようとしている。現在付き合いがある顧客とは、その多くが展示会をきっかけとしているということもあるが、従来同社が多く出展していた被服関連(「生地」や「ニット」等)の展示会だけではなく、生地やニットの用途として考えられる業界(「医療」や「福祉」等)に対する情報発信、宣伝の必要性を強く感じている。
坂下氏は今後の抱負をこう語っている。「本業とは一見関連性の薄い展示会に出展することで、発想をより多様に拡大することに繋がる。また、今回の研究開発のように思ってもいなかった顧客に繋がることもあるだろう。今後も積極的に自社の製品を様々な用途に出していきたい」。
事業化&マッチング成功のポイント
●確かな技術を確立するための研究開発
顧客に利用されるまでに必要な要素を考え、製法の確立・試作品の評価・量産化の段階を踏まえた研究開発を行うことで、性能面だけでなく顧客に発信可能な成果や技術を確立することができた
●製品の価値を活かした新たな市場の探索
製品の出口として従来想定していた市場に拘り過ぎることなく、製品の価値がより評価される市場への展開を図った
●様々な発信への展開
本業である生地業界とは一見関連性の薄い展示会も含めて、様々な展示会への出展を行う必要性を強く認識。今までは拾うことができなかった顧客の潜在的なニーズや、自社の製品・技術の展開先に関する情報を広く収集することにつながる
活用のためのアドバイス

開発次長 坂下剛さん
自社製品が他人の目に触れる機会を増やすには、展示会や商談会に積極的に参加するのも一案だ。自分達が想定していなかった製品の新しい用途に関するヒントが得やすいうえ、色々な用途のものを欲している方とのネットワークも構築できる。
例えば、製品の出口が見えている展示会への出展に力を入れるのはいかがだろうか。今回のサポイン事業の成果については、改めて振り返るとテキスタイル関係の展示会だけではなく、産業機器、輸送機器関係の展示会への用途を考え、出展することができたようにも思う。もし、多様な用途を意識して展示会に積極的に出展していれば、新たな顧客を紹介してもらうだけではなく、自社の力で新たな顧客を見つけられるようにもなる。
特定の市場にこだわり過ぎることなく色々な市場の情報を集めたうえで、製品を展開する市場について検討することで、製品をいち早く市場に出せるようになるのではないか。
紹介動画

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